環境省生物多様性センター抜粋
潜在自然植生とは今の状態で人為的な影響がなくなった場合、対象地域に最終的にどのような森が形成されるかを想定したものである
最終的な森の構成樹種を選択し、適切に植栽すればその地域における安定した森が早期に創造できるはずである
その森はまさしく大地に根ざした本物の森となり、環境保全機能を十分期待できる
裸地の状態で放置しても草がはえその後自然にフロンティア的な樹木が入り込み最終的にはその土地本来の森ができる
しかしそれでは膨大な年月(百年単位)が必要となるであろう
具体的な植栽方法はポット苗木による密植とマルチング(わら)が有効である
密植により苗木が競争し自然淘汰されより強い個体が選別され枯損した個体は土に還り栄養となる
マルチングは植栽初期においては雑草防止、水分保持などに有効その後肥料にもなる
管理も当初の3年程度は除草、施肥などが必要であるがその後は原則必要ない。
→[参照]ふるさとの森づくり 施工・管理マニュアル(本田技研)
樹種の選定は非常に重要で専門機関に依頼する方法もあるが
困難な場合はネットなどで対象地の潜在自然植生を調べることもできる。 (下部リンク参照)
注意しなくてはいけないのは対象地が盛土などで地形が変化した場合、樹種が変わる場合があることである
例えば現状田んぼなどでは湿潤地のため潜在自然植生がハンノキ林などになることがあるが
ここに数十cmの盛土をするだけで土壌条件が変わり潜在自然植栽がハンノキではなくなる可能性があるということだ
ようするに潜在自然植生をベースに環境に変更がある場合はそれを想定して樹種を選定しなくてはいけない
植栽時の景観的な配慮が必要な場合は苗木以外に成木を配植し、花木なども混ぜ合わせて植栽する方法がある
メインの樹種は自然植生をベースにするが過度に厳密になる必要もないであろう
わらのマルチングもかなり目立ので樹皮のマルチングなども併用することもできる。
潜在自然植生をベースとした森を、母なる森:Mather-Forestと名づけてみた
森の環境保全機能として大気の浄化機能、防音機能、微気候の緩和、雨水の貯蔵などが上げられる
これらは森が存在する限り永続的に期待できる機能であるが二酸化炭素の吸収に関しては一般的に誤解があるようだ
植物は二酸化炭素を吸収して酸素を出すが同時に生命活動のため呼吸をして二酸化炭素を放出している
若い森(樹木)は二酸化炭素の吸収量が呼吸による放出量より多いのでその分炭素として固定してどんどん成長するが
最終的に成長が止まり安定した状態になった森は二酸化炭素の吸収量と放出量が同じになったことを意味する
よって森の二酸化炭素の吸収効果は森の成長時には期待できるが成長が止まった時以降は期待できないのである
そして森は二酸化炭素の貯蔵庫として存在することになる。
潜在自然植生により分類された森(群集)の構成樹種の例(神奈川県) *代償植生:人為的な行為が影響した場合の植生
植生 | 分類 | ヤブコウジースダジイ群集 | イノデータブ群集 | イロハモミジーケヤキ群集 | シラカシ群集 | マサキートベラ群集 |
自然植生 | 高木層 |
スダジイ
モチノキ アカガシ アラカシ ヤブニッケイ ヤブツバキ カクレミノ ウラジロガシ |
タブノキ
スダジイ モチノキ シロダモ ヤブニッケイ ヤブツバキ クスノキ |
ケヤキ
イロハモミジ ムクノキ エノキ タブノキ シロダモ ヤブツバキ |
シラカシ
クスノキ ケヤキ アカガシ ヤブツバキ シロダモ |
クロマツ
マテバシイ ヤブニッケイ ヤブツバキ サンゴジュ ヒメユズリハ |
低木層 |
アオキ
ヒサカキ ネズミモチ ヤツデ シュロ ヒイラギ トベラ マサキ |
アオキ
ネズミモチ ヤツデ ヒサカキ マンリョウ |
アオキ
ネズミモチ シュロ トベラ イヌガヤ |
アオキ
ネズミモチ ヤツデ シュロ ヒイラギ |
トベラ
マサキ マルバシャリンバイ マルバグミ モッコク ネズミモチ |
|
草本類 |
ヤブコウジ
ヤブラン ジャノヒゲ シュンラン キヅタ テイカカズラ ベニシダ ヤマイタチシダ |
イノデ
キチジュソウ ツワブキ オオバジャノヒゲ ヤブラン オニヤブソテツ オモト |
ヤブラン
ジャノヒゲ ビナンカズラ ベニシダ ウラシマソウ |
ヤブラン
ジャノヒゲ オオバジャノヒゲ イノデ ベニシダ キチジョウソウ オクマワラビ |
ツワブキ
オニヤブソテツ ヤブラン オモト テイカカズラ ベニシダ シュンラン |
|
代償植生 | 高木層 |
コナラ
クリ エゴノキ ヤマザクラ アカメガシワ |
ケヤキ
エノキ ヤマハゼ カラスザンショウ ミズキ |
ミズキ
エノキ イヌザクラ |
イヌシデ
クヌギ コナラ エゴノキ ミズキ |
ヤマハゼ
カラスザンショウ アカメガシワ |
低木層 |
マルバウツギ
オニシバリ ムラサキシキブ カマツカ ガマズミ コマユミ ヤマツツジ ウツギ |
ムラサキシキブ
キブシ マユミ イヌビワ ヤマグワ クサギ カマツカ |
イヌビワ
ヤマグワ サンショウ キブシ ムラサキシキブ ウグイズカグラ ヤマブキ |
ハナイカダ
クロモジ サンショウ ネムノキ ヤマコウバシ イボタノキ ムラサキシキブ フジ |
マルバウツギ
オオイボタ ガマズミ イヌビワ イボタノキ |
|
草本類 |
ヒメカンスゲ
ナキリスゲ ヒカゲスゲ コウヤボウキ ススキ アズマネザサ |
イヌワラビ
エビネ ミゾシダ |
ミゾシダ
ヤブミョウガ エビネ チヂミザサ |
ナルコユリ
エビネ ヤブミョウガ シオデ ホソバヒカゲスゲ キンラン |
ススキ
ケスゲ シガヤ ヤマカモジグサ コバノタツナミソウ |
参考リンク
ふるさとの森づくり 施工・管理マニュアル(本田技研)
□潜在自然植生図
全国(環境省)
首都圏(横浜国立大学:29814Kb)
東海地方(同上:30661Kb)
近畿圏(同上:65700Kb)
山梨県(同上:9783Kb)
川崎市(同上:1249Kb)